東京までママチャリで行った話⑥
6日日 前編 宇都宮~???
《旅は絶望へ…》
気づくと時刻は午前2時を指していた。
どうやら清掃の人が休憩所を掃除しなければならないようで、どかなければならなかった。
午前3時に閉店のようで、出発までは残り約1時間と迫っていた。
僕は食堂の机に頭を突っ伏して最後の仮眠に入った…
そして時刻は午前3時になった。いよいよ出発だ。
外は相変わらず雨が降り注いでいた。僕はいつものように雨具に着替え、準備をし、チャリにまたがった。
ところが、思ったよりも辺りは暗く、先は人気のない道が続いていた。
「これは1度コンビニで暖をとって、辺りが明るくなってから出た方が無難だな」
と思い、僕は近くのミニストップへ向かった。
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何時間くらい経っただろう………
ふと外を見てみると明るくなっていた。朝だ!と思い、一目散に僕はコンビニを出た。
雨は降ってるものの、ウキウキな気分でチャリを進めた。
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だが、ちゃりを少し進めたところで事態は一変した。
「ガン!!」
とタイヤの方から鈍い音が聞こえた…
自分は悟った。遂に来たかと…
タイヤがパンクしてしまったのだ。
なんでも400㌔以上ものの道のりを走ってきた自転車だ。これには自分も致し方ないと思った。
すぐに自分は前もって百均で購入した瞬間タイヤパンク修理材を使った。
けれども、自転車が直ることはなかった。
僕は一気に絶望に陥った。どうしよう…どうしよう…どうしよう…ただただそう考えるしかなかった。
この時ヒッチハイクをして帰るというアイデアもあったが、自転車を乗せてくれる車と言ったら軽トラックくらいしかない。しかし運が悪いことにそこは人通りが少ない道路だった。ずっと待っていては日が暮れるという状況だった。
僕はすぐにGoogleマップを使って近くの自転車屋さんを探した。すると何件かヒットし、1番近い自転車屋さんが4km先にあることが分かった。
まず旅のことは一旦忘れて僕はそこを目指すことにした。
寒さが僕を襲った。歩いている時とチャリに乗っている時では、雨が体に当たる範囲に明確な差が出る。歩いている時は全身ずぶ濡れを覚悟しなければいけない。
ふとLINEを見ると母からのメッセージがきていた。
内容は
「台風も近づいてきてるけど、帰ってきてるの?」
という短いメッセージだった。
その時自分は泣きそうになった。タイヤがパンクしてしまい絶望を味わっていたからかも知れないが、何より母親の温かさを身に染みて感じたからだ。
僕はLINEでたった一言送った。
「明日の夕方までには帰れると思うよ」
と。
1時間ほどかけてようやく自転車屋さんに着いた。シャッターは半分閉まっていて、やっているのかなと不安になったが、数分後お店の人が顔を出してくれた。
どうやら奥さんのようで、「もうすぐしたら来るから待ってなさいね」と言われた。
凍えながら待っていると、ようやく店主の人が現れた。
「自転車どうしたのー?」と聞かれると僕すぐに「パンクです…」と答えた。
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「これはダメだねえ、タイヤに穴が6つも空いてるよ、よくここまで持ったね、ここまで走れたのが奇跡だ」
店主の人に点検してもらうとタイヤには穴が6つほどあいているようで、ここまで走れたことだけでも信じられないことだそうだ。
タイヤは今すぐにでも交換しなくてはならない状態だったが、お金ももう少しで底をついてしまう所だったので、タイヤの交換は出来なかった。
自分は何とか頭を下げてお願いをし、店の人にタイヤの穴にパッチ(穴を塞ぐための道具)をつけてもらった。財布の中を見て自分が困っていると、お店のひとに「料金もサービスで600円でいいよ」と言われ、再び泣きそうになった。
ありがとうございます、ありがとうございます。僕は何度も頭を下げた。感謝してもしきれない、今でも、この人がいなかったら自分はあの先どうなっていたんだろうと思う時がある。
出発前にはコーヒーと飴をご馳走してくれた。僕はそれを一気に胃の中へと押し込んだ。
最後に店の人にこう言われた。
「タイヤは宮城に着くまでに持たないかもしれない。それは理解してくれ。宮城に無事に着くことを祈っている。」
僕は最後に改めて感謝の礼を言って、自転車屋さんを後にした。
宇都宮を抜けた先には那須高原が待っている…
なんとかそこまではもってくれ!!
僕は必死にチャリに頼んだ。
後半へ続く…
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~プチ旅のエピソード~
独り言も飽きてきて本当に孤独になった時、自分は音楽に頼るようにしている。
なんだかんだいって1番勇気と元気をもらえるのは音楽だ。今回もそんな音楽に何回も助けてもらった。
特に聴いていたのは安室奈美恵ちゃんの「Hero」とONE OK ROCKの「wherever you are」
どちらも名曲!!
時には寂しい思いをし、時には涙を流し、時には曲を聴いて笑顔をもらう。
自分の旅のスタイルはこんな感じです。
おわり。